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配達人


高尚な話題が多い当事務所の雑記帳でこの手の話を扱うと白い目で見られそうですが、プレイステーション4で遊べるデスストランディングというゲームがあります。

 

 

一世を風靡したメタルギアソリッドというゲームのディレクターである小島秀夫氏がプロデューサー兼ディレクターとして作成されたゲームといえば、ゲーム好きの方は「ほほぅ」と呟くことでしょう。

 

 

昨年末に発売され、世界的な評価も高いゲームです。

 

 

7月14日にPC版が発売されたようなので、真正のゲーマーの方は是非ご購入下さい。

 

 

さて、ゲーマーではない方のために、ざっくりとどのようなゲームかといいますと、、、

 

 

・舞台はちょっと未来のアメリカ合衆国。

・世界はデスストランディングという大爆発(※)の後、分断されている。

・人々はシェルターにこもって生活している。 

・外界では所々で人をあの世(※)に引きずり込む妖怪みたいなもの(※)が出てきたり、物の時間を急速に進める雨(※)が降ってきたりする。 

・そのため外界に出る時にはそれなりの装備が必要であり、普通の人はシェルターからほとんど出ない。

・人々をつなげているのは弱い通信と荷物を運ぶ配達人。

・主人公は配達人であり、アメリカの東海岸にいるところからゲームはスタート。

・訳あって(※)主人公は荷物を配達しながら大容量通信に必要な鍵を運び、東海岸から西海岸まで大容量通信をつなぐことを目指す。

 

(かなり作りこまれているゲームのためファンの方の怒りを恐れず※部分はかなり省略しています。正確な内容は○。○ペディアで検索してください。ただし、ネタバレ注意。)

 

 

楽しみ方は人それぞれですが、このゲームでは大量の配送荷物を背負って険峻な山(雪山もあります)を越え、荷物を配達する場面もあり、私はなんちゃって歩荷さんの気分を味わったり、ロープやはしごを使って登山ルートを開拓するという楽しみ方をしていました。このゲームでは、主人公を急旋回させるなどすると荷物の重さに応じてバランスを崩し、これを立て直さないとよろめいて、最後には転んで出血します。また、無茶な傾斜で直登させると主人公の体力がみるみる減っていくようにもなっていて、なかなかリアルな登山体験ができます。ちなみに、私は四回ほど滑落死しました。

 

 

それはさておき。

 

 

このゲームの世界ー人々が外界にある何かを恐れてシェルターに引きこもり、人をつなぐものは通信と配達のみという世界ーは、新型コロナウイルスの感染を恐れて外出を控える現実の生活と似通っていて、緊急事態宣言下、宅配業で勤める夫を持つ女性が、「夫が俺らは底辺の仕事だからなぁ言いながら今日も働きに出た。何をいってるんだ、生命線だ。」という趣旨のことをTwitterで呟いていた言葉が心に刺さりました。

 

 

ネットショッピングやお取り寄せ等、元々社会インフラとして欠かせない存在だった配送網ですが、人が実店舗で物を購入することが減った現在は、さらにその重要性が増しています。

 

 

自身は色々な人と接触して感染リスクにさらされながらも、毎度さわやかな笑顔で配送してくれる配達人の皆様に感謝の気持ちを持つとともに、いつか配達人の皆様を支えられるような仕事ができたらなぁと思います。

 

 

ゲームだって時には物事考える契機になる、というお話でした。
 

 

 

5june7

更新日2020.7.16


A Day in the Pandemic


コロナ禍の中、三歳になる我が家の息子はマスクを付けて幼稚園に通っています。

 

 

 

先日は、普段幼稚園への送り迎えをしている妻に所用ができたため、私が、朝、息子を幼稚園へ連れていき、昼過ぎに迎えにいきました。コロナの流行がなければ近くに住む妻の実家に頼めたのですが、感染が落ち着くまで実家との行き来も控えようということになっており、そのほかに頼める相手もいなかったからです。

 

 

 

九州に豪雨被害をもたらした、いつまでも居座り続ける梅雨前線のため、その日の朝も小雨が降っていました。私は玄関のドアを開けて外の様子を見ながら、電チャリ(電動アシスト自転車)に乗って行くかどうかしばらく迷った後、「歩いて行こう」と息子に伝え、「いいよ!」と許可(?)を得ました。

 

 

 

息子にマスクをつけさせ、ぶかぶかのレインコートを着せて、長靴をはくのを手伝い、私も忘れずにマスクをします。幼稚園に持っていく息子のものには全て名前を書かなければならないため、息子の使い捨てのマスクにも、既に妻が名前を書いてくれていました。

 

 

 

黄色いてるてる坊主に長靴が生えたような格好の息子の手を引き、私自身は傘をさして、住宅街の道のりを幼稚園まで12、3分ほど歩きました。私達の横を、電チャリの後ろに子供を乗せた何人ものママ達が、「このくらいの雨で、いちいち歩いていられるか」と言わんばかりに通り過ぎ、同じ幼稚園に向かっていきます。

 

 

 

幼稚園の正門前に着くと、副園長の中年男性が待っていて、「おはよう、がんばって歩いたね」と言いながら、息子のおでこに非接触の体温計を当てて検温してくれます。それが終わると、息子は私と別れて門の中へ入り、入ってすぐのところにあるテントの中で消毒ジェルのボトルを2、3度押した後、ぬかるんだ園庭をフラフラと歩いていきました。

 

 

 

てるてる坊主が幼稚園の建物の方に漂っていくのを見守った後、私は自宅に帰り、しばらく仕事をします。犬以外の家族のいない静かな家で仕事をすると、さすがに多少は集中でき、「在宅勤務」らしくなったかなと自己満足にひたったのもつかの間、午後2時のお迎えの時間が近づいてきました。

 

 

 

雨も弱くなっていたため、今度は私もさっそうと電チャリにまたがり、幼稚園の駐輪場へ滑り込みました。登園時とは違い、「お迎え」の際は、保護者が各教室の前まで行くことになっています。私は、息子を幼稚園に送っていくのは何度か経験済みだったのですが、迎えにいくのは初めてだったため、妻に借りた「保護者証」の入ったカードケースを首から下げ、幼稚園の正門から中に入り、妻に教わった「あか3くみ」の教室を探して、キョロキョロしながら歩きました。

 

 

 

1階にある教室の入り口に着き、中をのぞきこむと、どうやら他の保護者はまだあまり来ていないようで、20人弱の園児達が通園時の制服である体操着の上下を着て、紅白帽をかぶり、教室の床に座って先生の話を聞いているところでした。

 

 

 

そこで私が思わずギョッとしたのは、園児達が全員マスクをしていたことでした。下半分は白いマスク、頭は赤い帽子、眼だけがのぞいている小さな顔が20ばかり並んでいる様子は、私の幼稚園のイメージとはかけ離れた、何ともいい難い奇妙な光景でした。

 

 

 

「これがウィズコロナの幼稚園か。どれがうちの子かまったく分からないじゃないか…」と思いながら立ち尽くしていると、先生が白いマスクの群れの中から息子を引っ張り出し、私のところまで連れてきてくれました。

 

 

 

息子を乗せて電チャリで家に帰る途中も、白いマスクがシロツメクサのように教室いっぱいに広がったあの様子が頭に浮かんできました。「アフターコロナ」「新常態」がどんなものになるかは分からないけど、園児達の小さな口や鼻がマスクから1日でも早く解放されればいいのに、と思ったのでした。
 

 

(パパの端くれ)

更新日2020.7.16

 


変わりゆく民事裁判

 

1 当事者が満足する民事裁判は,適宜な審理で事案を解明して行われる判断であり,公正,適正,迅速で充実した審理に基づく裁判である(民事訴訟法2条,裁判の迅速化に関する法律1条,2条等参照)。

 

 

  このような裁判の実現には,裁判手続におけるほぼすべての権限を委ねられ,裁判手続の主宰者の地位に立つ裁判官が当事者を巻き込んで紛争解明のための争点整理に取り組むことが不可欠の条件である。

 

 

 

 

 

 

2 裁判官が行う争点の整理態様には大別して2通りある。一つは,裁判官が当事者の主張を形式的に突き合わせ,双方の主張の対立を一覧表化するものである(以下「A類型」という。)。もう一つは,裁判官が審判の対象である訴訟物の判断に必要な争点を追求する姿勢の下に,事実認定,法律論のいずれであれ,法と証拠に基づいて当事者と議論を尽くし,当事者が争点だと主張している対立点を積極的に解消していく作業態様である(以下「B類型」という。)。筆者の考える争点整理はB類型である。なお,以上のほかにも,A類型に類似するが実は何もしない漂流型訴訟態様(以下「C類型」という。)を採る裁判官も残念ながら散見される。

 

 

  A類型を採る裁判官は,上記の主張対立一覧表化が争点整理だと思い込んでおり,これを終えると,争点整理は完了したとし,審理促進理念に追い立てられるかのように,集中証拠調べを標ぼうして,人証調べに入る。しかし,こうした経緯の人証調べは,争点が多岐にわたり絞り切れていない上に,時間が厳しく制限されている中では,勢い争点の総花的な尋問となるため,事案解明には遠い結果となり,当事者には消化不良の裁判となる傾向が強い。

 

 

  対して,B類型の裁判は,裁判官が当事者を巻き込んで積極的に事案解明に踏み込んだ審理を行うので,当事者との間に緊張感が漂い,ときに激しい議論が飛び交うこともあるが,目的が事案解明と明快であるため,公正であり,適正かつ迅速で充実した裁判となり,審理期間もA類型裁判より短く,当事者は裁判を受けたという実感を抱くことができ,紛争の抜本的解決を導くだけでなく,裁判を通じての法規範の創造の要請にも応えられる。

 

 

  では,民事裁判の現状はどうかというと,A類型でも実践されていれば上出来であり,実際にはA類型もどきの実はC類型に近い形態のものが一般的であり,何を審理し判断すべきかを把握するための争点整理が行われているとはいえない。

 

 

 

 

 

 

3 平均的な裁判官がA類型を争点整理と信じ込み,B類型など全く念頭にない民事裁判を営む背景には、迅速こそ裁判手続の最優先事項と考え,公正,適正,充実は従たる要因と扱う考えがあるのではなかろうか。しかし,裁判を受ける権利者である国民はそんな裁判を望んではいないであろう。

 

 

  このような民事裁判の現状は,多岐にわたる事情,すなわち,現行民事訴訟法で事実認定が高裁までの専権とされた結果,裁判官の事実に対する謙虚さが失われたこと,平成11年頃以来の司法制度改革により法曹養成が不十分なものとなった上,効率優先の民事裁判が優先されるようになったこと等の数多の負の遺産があること,さらには膨大な過払金返還請求訴訟が裁判官から虚心に事件に取り組む意欲を削いでしまったこと等が相互に影響し合って生じているものと思われる。

 

 

 

 

 

 

4 実際の民事裁判においては,争点整理は名ばかりで形骸化していることを否めず,この先も国民が求め続けるであろう公正,適正,迅速で充実した審理による民事裁判実現への道を見いだすのは困難であるように思う。

 

 

  しかし,責任は司法に関わる者だけにあるのではない。司法は,国の統治を支えるものであり,国の有り様に呼応して変容する宿命にある。そうであれば,日本の民事裁判の来し方行く末は,実は,衰退期に入っていたわが国の実情に呼応して変容してきていたのであり,この先なお公正,適正,迅速,充実審理に基づく民事裁判を求めるのであれば,国の有り様から考え直さなければ展望は開けないということになりそうである。

 

 

(客員弁護士 26期 藤 村  啓)

更新日2020.07.16


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