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「司法のIT化について」


  日本の司法は,他の先進諸国に比べてIT化が遅れていると言われていますが,ここに来てようやくIT化の実現に向けた取り組みが本格化しています。

 

 

 


  司法のIT化は,訴訟等の法的手続のオンライン化を実現し,また訴訟記録を電子化することによって,手間・時間・コストを削減すること(効率化・省エネ化)を目的としています。

 

  これらが実現すれば,例えば,裁判所に出頭することなく,Web会議で裁判期日を実施したり,訴状等の書面を郵送することなく,ネット上で提出したりすることが可能になります。

 

 

 


  一見IT化は良いことずくめであり,IT化が実現されれば効率性が飛躍的に高まるように思えますが,実は現在の制度にも利点はあります。

 

  例えば,現在,私は裁判期日のために半日かけて遠方の裁判所に出向くことがあります。期日での手続が5分程度で終わることもあり,そういうときは「来た意味なかったな・・・」と思って裁判所から帰るときの足取りも重くなるのですが,ときに相手方と対面だからこそできるやり取りをすることができ,それが事件の早期解決に結びつくことがあります。

 

 

 


  対面でのやり取り(ここでいう「対面でのやり取り」は,Web会議等での画面を通したやり取りを除きます。)のメリットとしては,まず相手方との最低限の信頼関係の構築に役立つことが挙げられます。人間は通常相手に面と向かって強い言葉を発することにためらいを感じますので,対面だと暴言などもなく落ち着いたやり取りをすることができる場合が多く,そのやり取りが最低限の信頼関係の構築に役立つことがあります(このような「ためらい」は,対面で強い言葉を発すると相手方からその場で物理的な反撃を受ける可能性があるという潜在意識が影響しているように思いますので,このような物理的反撃を受ける可能性がないWeb会議等では上記メリットは薄れるかもしれません。)。裁判所に出頭した場合,期日終了後,裁判所内で相手方と一対一で話をすることができることも大きいです(期日終了後のやり取りでは,期日での形式張ったやり取りでは見えなかった相手方の本音がわかることも多い。)。

 

  また,これは遠方からの出頭の場合に限定されますが,遠方から裁判所に出頭した場合,相手方に「遠方からわざわざ出頭してもらったのだから,きちんと話をしないと申し訳ない」という意識を持ってもらえることが多く,これがその後の円滑な話合いに影響することがあります。

 

 

 


  このようにざっと挙げただけでも対面でのやり取りには無視できないメリットがあり,この点は今後も留意されるべきであるように思います。

 

 

 


  訴訟記録の電子化については,これが実現すると,裁判所に紙ベースの記録を持参せず,パソコンのみを持参して裁判期日に臨む弁護士が増えるように思います。大きな事件になると,訴訟記録は膨大なものになりますので,持参するのがパソコンだけで済むと確かに便利ではあるのですが,パソコンと紙を比較した場合,確認の迅速性という点ではまだ紙に軍配が上がると思います(現時点でもパソコンのみを持参し,裁判期日の際にパソコン上で訴訟記録を確認する弁護士がまれにいますが,確認に手間取ることが多いです。)。そのため,訴訟記録の電子化が実現しても,私は当分紙ベースの記録を持って裁判期日に臨むことになると思います。

 

 

 


  司法のIT化が業務の効率化に役立つことは間違いないですし,良いものは積極的に取り入れていくべきと思いますが,IT化を進めた結果,紛争の早期解決,手続の円滑な進行等から遠ざかったのでは意味がありませんので,事件の性質に応じ,削るべき作業と削るべきではない作業を見極めた対応を心がけたいと思います。

 

 

(TI)

更新日2020.2.19

 


スマホ決済


  特に昨年から、キャッシュレス決済、中でもスマホ決済に注目が集まっていますね。

 

 



  昨年10月の消費増税に伴う景気対策の一環で、キャッシュレス・ポイント還元事業が実施されていますし、また、この機にキャッシュレス決済の覇権を握ろうと、特にメルペイ(NTTドコモ提携)・PayPay(ソフトバンク・ヤフー合弁)・楽天ペイメント(au提携)・LINE Pay・・・(順不同)といったスマホ(スマートフォン)決済事業者が、やりすぎではないかというほどのポイント還元等を通じて、利用者数と加盟店数の拡大を図ろうと、しのぎを削っています。
 

 

 


  その成果なのでしょうが、スマホ決済ができることを示す表示(ロゴ)やQRコードを印刷したボードが設置されているお店もよく見かけるようになりました。私の周りを見渡しても、使っている人が増えたことを実感します(その理由は、ほとんどの場合、現在のキャンペーンによるポイント還元率の高さにあるようです。)。

 

 



  ただ、私自身は、どうしても、クレジットカード一体型のiD(後払い式電子マネー)や自動チャージ式の交通系電子マネー(いずれも自動的にクレジットカードにて後払い)といった、端末機器にカードをタッチするだけで決済が完了する非接触型IC決済手段に加えて、スマホ決済手段の常用への一歩を踏み出せずにいます。

 

 



  私と同じようにスマホ決済を躊躇する人の中には、直近のPayPayやセブンペイの問題(第三者による不正利用問題)などを受けて、セキュリティ面での不安を感じている人もいるでしょうし、スマホ決済手段の使い方がわからない(そもそもスマホをもっていない・・・)人もいるでしょう。

 

 



  私がスマホ決済手段の常用に踏み出せないことには、そういった理由もあるのですが、最も大きな理由を考えてみると、要するに、現状の常用決済手段であるiDや自動チャージ式の交通系電子マネーを超える利便性を見出せない(面倒くさい)ということに行きつきます。

 

 



  利用者側の手間を考えた場合、主として、

 


  1)スマホ決済は基本的に前払いチャージ式(資金決済法の「第三者型前払式支払手段」)で、その残高から決済する必要があり、いちいちチャージするのも残高を管理するのも面倒・・・・(交通系電子マネーもチャージ式ですが、公共交通機関は日常的に使用しますし、大部分の公共交通機関は交通系電子マネー以外のキャッシュレス決済手段を利用できないため、保有せざるを得ないという違いがあります。)、

 


  2)スマホ決済特有のQRコード決済やセルフ決済(店頭にあるQRコードをスマホで読み取るか、アプリ上で自ら店舗を検索したうえで、金額を入力して決済し、決済完了画面を店舗に提示します。)は、アプリを起動したうえで(使い方によってはパスワードを入力してログインし)(セルフ決済の場合は自ら目的の店舗を検索し)自ら金額を入力するなどの手間と時間がかかる(少なくとも数秒から数十秒かかる)、

 

 
  という点が挙げられるでしょうか。

 

 



  誤解がないようにフォローしておくと、1)については、前払式のスマホ決済手段でも、自動チャージ設定が可能な場合が多いようですし、2)については、スマホ決済手段でも、バーコード決済(スマホのアプリで表示したバーコードを提示するだけで、店舗がこれを機械で読み取って決済。利用者は、自分で金額を入力する必要なし。)やスマホiD決済があるようです。

 

 



  とはいえ、これらの決済ができる店舗では、ほぼ例外なくクレジットカード一体型のiDや交通系電子マネーが使えますし、結局のところ、既存のクレジットカード一体型のiD等と利便性が同じか近い水準に止まるわけです。そう考えると、端末機器にカードをタッチするだけで後払いできるiDや自動チャージ式の交通系電子マネーは、利用者にとってかなり優れた決済手段なのだと再認識させられます。

 

 



  一方で、スマホ決済手段がクレジットカード一体型のiDや交通系電子マネーに優る点を挙げるならば、さきほどスマホ決済手段「特有」と述べたQRコード決済やセルフ決済は、店舗(加盟店)側におけるバーコードリーダーといった端末機器の導入が不要であり、初期コストが小さいため、小規模の加盟店を増やしやすいという点なのでしょう(現在、PayPay等は、加盟店数の拡大を図るために、期間限定で、加盟店側の継続的なコストである手数料も無料としているようです。)。

 

 



  クレジットカードや交通系電子マネーは使えないけれどもスマホ決済手段ならば使える、という店舗が、利用者にとって無視できないほどに増えたような場合や、さらなる技術(サービス)革新によって利便性がさらに向上した場合には、私もスマホ決済手段を常用していくのだろうと思いますが、正直にいえば、現時点では、そこまでには至っていないように感じます。

 

 



  本来のターゲットであるニコニコ現金払いを信条とする人たちをキャッシュレス決済に引き込むのも大変だと思いますが、既存のキャッシュレス決済に親しんだ層にスマホ決済手段を浸透させ、(ポイント還元等のキャンペーン終了後も)継続的に常用させることができるのか、(利用者への)過剰なポイント還元や(加盟店の)手数料無料といった一時的な措置だけでなく、利用者・加盟店にとっての利便性向上に向けたスマホ決済事業者の努力を引き続き見守りたいと思います。

 

 

(非接触型IC決済信者)

更新日2020.2.15

 


民法改正について(相殺編)


1 相殺に関する改正の概要

 

 

 

 

  相殺は、意思表示により自己が相手方に対して有する債権(自働債権)と相手が自己に対して有する債権(受働債権)とを対当額で消滅させる行為であり,実務上,極めて重要な作用を営む制度です。今般の民法改正では,相殺に関する条項にも手が加えられました。その中でも重要と考えられる点をご紹介します。

 

 

 

 

 

2 不法行為債権と相殺

 

 

 

 

  現行民法509条は、不法行為に基づく損害賠償請求権(以下「不法行為債権」といいます。)を受働債権とする相殺を債権者に対抗できないものとしていました。これは、現実の給付を実現させることによる被害者の保護と不法行為の誘発を防止する等の趣旨に基づくものでしたが、相殺を禁止する範囲が広すぎるとの批判もありました。

 

 

  新法は,相殺禁止の対象を不法行為債権のうち「悪意」によるものに限定しました(新法509条1号)。その結果,新法によれば,これまで相殺が禁止されていた物損の過失事故の加害者(債務者)は相殺をすることが可能となりました。

 

 

  一方で,被害者保護の要請の強い,人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については,不法行為のみならず債務不履行に基づく損害賠償についての相殺も禁止する旨を定めました(新法509条2号)。新法によれば,安全配慮義務違反によって人の生命又は身体に損害が生じた場合などの債務不履行に基づく損害賠償請求権であっても,相殺をもって債権者に対抗できないこととなります。

 

 

  これらの改正は,交通事故の物損事故等における損害賠償の法的解決に大きな影響が出るものと予想され,保険実務への影響も大きいのではないかと思われます。

 

 

 

 

 

3 差押えと相殺

 

 

 

 

  現行民法511条は、支払の差止を受けた第三債務者は,その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができないと定めていますが,第三債務者が有する反対債権(自働債権)の弁済期が被差押債権(受働債権)の弁済期より後に到来する場合に,第三債務者が相殺をもって差押債権者に対抗することができるか否かにつき明文上明らかではなく,学説が対立していました。

 

 

  この点につき,判例(最判昭和45・6・24)は,反対債権が差押え後に取得されたものでない限り,第三債務者は,反対債権と被差押債権の弁済期の先後を問わず,相殺をもって差押債権者に対抗することができるとし,いわゆる無制限説を採用し,現在の法務・金融実務においてはこれを前提とした運用が定着していたところ,新法により,上記最高裁の無制限説の立場が明文化されました(新法511条1項)。無制限説の明文化は,これまで同説を前提として積み重ねられてきた実務を安定させるものであって,金融機関としては歓迎すべきものであると思われます。

 

 

  また,破産法との平仄の観点から、差押えを受けた債権の第三債務者が,差押え後に債権を取得した場合であっても,その取得した債権が差押え「前の原因」に基づいて生じたものであるときには,原則としてその債権による相殺をもって差押債権者に対抗できることとされ(新法511条2項)、今回の改正により,相殺範囲は,無制限説として通常理解されていたところよりも拡張されたといえるでしょう。

 

 

 

 

 

4 債権譲渡における相殺

 

 

 

 

  現行民法では,譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは,債務者は,その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができるとされています(現行民法468条2項)が,債務者が,譲渡人に対する反対債権による相殺を譲受人に対抗できるのはどのような場合かについて,明記されていませんでした。

 

 

  新法では,対抗要件具備前に取得した譲渡人に対する債権(新法469条1項)と,対抗要件具備時より後に取得した債権であっても,1)対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権(同条2項1号),2)譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権(同条2項2号)について,相殺が認められることが明記されました。

 

 

 

 

5 その他

 

 

 

 

  これらのほかにも,相殺禁止の意思表示に関する点や,相殺の充当方法なども一部修正が加えられており,注意が必要です。

 

 

 

(弁護士 63期 田 村  圭)

更新日2020.2.15
 


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